製品Q&A スーパーボンド
余剰セメントを上手く取るには?
余剰セメント除去に便利なツール
ウォッシャブル セップ
予め補綴物に「ウォッシャブル セップ」を塗布しておくと、その上にはみ出した余剰セメントが楽に除去できます。
余剰セメント除去器(株式会社YDM)
先端に小さな刃がついているので、硬化した余剰セメントも除去しやすい器具です。
ウォッシャブル セップの操作手順
上手く筆積できないのですが?
ピンポイントに筆積したい方は・・・
ディスポチップ筆積S(緑)・筆積L(ピンク)をお使いください。
大きなポリマー玉で一気に筆積したい方は・・・
ディスポチップ筆積LL(紫)・筆積3L(オレンジ)をお使いください。
上手なポリマー粉末の採取方法
筆に付着したスーパーボンドを清掃するには?
新しい筆先にお取り替えください。
専用の「スーパーボンド 筆洗い液Ⅱ」をご使用ください。
洗い終わった後は筆先を整えて乾燥してください。
詳しくはスーパーボンド 筆洗い液Ⅱの取扱説明書をご参照ください。
ジルコニア・メタルに接着するには?
スーパーボンド PZプライマー
スーパーボンド PZプライマー処理で陶材・無機フィラー含有のコンポジットレジンはもちろん、ジルコニア・オールセラミックスにも接着することができます。
ポーセレン (#600エメリー紙研磨面) | プライマー | 接着強さ(MPa) |
---|---|---|
VITA VMK マスター (VITA) |
スーパーボンド PZプライマー |
16 |
IPS e-max Press (Ivoclar vivadent) |
23 |
- ※
- 熱サイクル試験(耐久性試験):TC10,000回後
ジルコニア (#600エメリー紙研磨後サンドブラスト処理面) |
プライマー | 接着強さ(MPa) |
---|---|---|
Procera AllZircon (Nobel Biocare) |
スーパーボンド PZプライマー |
30 |
カタナ (クラレノリタケ) |
25 | |
Lava (3M ESPE) |
25 |
- ※
- 熱サイクル試験(耐久性試験):TC10,000回後
V-プライマー
非貴金属(Ti合金・Ni-Cr合金等)及び銀合金には前処理無しで接着します。
貴金属(金合金・Pd合金・白金加金等)にはV-プライマー処理で接着できます。
- ※
- アルミナサンドブラストは必須です。
金銀パラジウム合金との接着耐久性
ティースプライマーの特徴は?
ティースプライマー
ティースプライマーはエナメル質・象牙質兼用のセルフエッチングプライマーです。
水洗不要で、エアーブローの強弱や処理時間の影響を受けにくいプライマーです。
室温(1℃~30℃)で保管してください。
表面処理材レッド・グリーンの特徴は?
左:表面処理材レッド 右:表面処理材 高粘度レッド
表面処理材レッド及び高粘度レッドはリン酸水溶液です。エナメル質専用の表面処理材です。
高粘度レッドはシリンジから直接歯面に塗布できます。
左:表面処理材グリーン 右:表面処理材 高粘度グリーン
表面処理材グリーン及び高粘度グリーンはクエン酸・塩化第二鉄の水溶液です。象牙質用(研削エナメル質を含む)の表面処理材です。
高粘度グリーンはシリンジから直接歯面に塗布できます。
次亜塩素酸ナトリウム処理後にスーパーボンドを使いたい場合の前処理は?
アクセル
次亜塩素酸ナトリウム処理後はスーパーボンドの接着力が低下しますので、歯面処理材アクセルをお使いください。
アクセルによりスーパーボンドの接着力が回復します。
アクセルの操作手順
上手く混和泥を移送する方法は?
混和用ディスポチップをお使いください。
混和用ディスポチップをお使い頂くことで混和泥が移送しやすくなります。
すぐに糸を引いてしまい十分な操作時間が取れないのですが?
- 混和用ポリマー粉末をご使用頂くことで十分な操作時間が確保できます。
それ以外のポリマー粉末の場合はダッペンディッシュ(陶器)を十分に冷却してご使用ください。 - ポリマー粉末とクイックモノマー液又はモノマー液は適正な比率でご使用ください。
ポリマー粉末の比率が多いと硬化時間が短くなります。 - ダッペンディッシュ(陶器)をご使用になる場合は結露を拭き取ってください。
- 混和用ポリマー粉末使用時でも、室温が25℃を超える場合や、更に操作時間を延長したい場合は、ミキシングステーションをご使用ください。
ミキシングステーションの使用方法
スーパーボンドが硬化しないのですが?
- 使用期限が切れていませんか?
使用期限内のものをご使用ください。 - ポリマー粉末を出したままにしていませんか?
古いポリマー粉末を廃棄し、新しいものをご使用ください。 - 活性化液を調製してから5分以上経過していませんか?
古い活性化液を破棄し、調製し直してください。 - キャタリストVは滴下されましたか?
キャタリストVを滴下して活性化液を調製してください。 - ポリマー粉末とクイックモノマー液又はモノマー液の比率は適正ですか?
ポリマー粉末の比率が減ると硬化が遅くなります。
上手く接着しないのですが?
- 接着面の前処理は適切ですか?
接着面に合った前処理を行ってください。 - 唾液などで汚染されていませんか?
汚染された接着面を清掃して、再度接着操作を行ってください。 - 混和泥が糸引き状態になっていませんか?
糸引き前のサラサラの状態で接着操作を行ってください。 - 十分に硬化していない段階で研磨や咬合調整をしていませんか?
研磨・咬合調整は十分に硬化してから行ってください。
硬化物の組成は?
基本組成は、歯科材料として床用レジンなどで広く使用されているPMMA/MMAレジンです。したがって重合硬化すると全体が PMMA となります。拡散促進モノマー「4-META」が MMA と共重合し、その重合開始剤として TBB を採用しています。顔料やX線造影材以外の「無機質フィラー」は含まれません。
MMA が主成分のスーパーボンドは強度が低いのでは?
硬化物の曲げ強さなどを測定すると、通常数値は破断点を測定しておりますが、スーパーボンドは破断点は認められず降伏点での測定となっており、そのことにより、荷重を受けると追従して塑性変形するという柔軟性があることがわかります。この特性と高い接着強さが組み合わさることにより、補綴物に加わる衝撃に高い抵抗性を示しており、実際の臨床例(動揺歯固定、ジャケットクラウンの装着など)でも高い評価を得ています。(下表参照)
ポリマー粉末 | 液材 | 曲げ強さ (MPa) |
曲げ弾性率 (MPa) |
吸水量 (μg/mm3) |
溶解量 (μg/mm3) |
被膜厚さ (μm) |
---|---|---|---|---|---|---|
クリア | モノマー液 | 61.3* | 1.9 | 32.6 | 2.0 | 28 |
筆積クリア | クイックモノマー液 | 59.7* | 1.7 | 29.0 | 3.6 | 43 |
混和ティースカラー | クイックモノマー液 | 59.9* | 2.2 | 32.8 | 4.0 | 18 |
混和ラジオペーク | クイックモノマー液 | 55.2* | 1.7 | 33.0 | 3.6 | 22 |
(ISO4049:2000)
- ※
- 熱サイクル試験(耐久性試験):TC10,000回後
吸水による強度の低下が問題では?
スーパーボンドの弱点として、吸水性を強調しその耐久性を疑問視する記述が見受けられる場合があります。しかし実際にスーパーボンドの耐久性を証明する例として、クラウンマージン部にスーパーボンド 250μm 程度露出したケースが観察され、若干の表面磨耗はあるものの 10年以上変色することなく保持され、辺縁封鎖も良好に経過したことが報告されています。
「キャタリスト」の成分「TBB」とは?
TBB とは、トリ -n- ブチルボランの略称で、有機ホウ素化合物です。非常に反応性に富み、そのまま使用すると危険なので、これを部分酸化することにより、安全に扱えるようにしたのが「キャタリスト」です。TBB は、酸素や水と反応して分解することにより、MMA の重合を開始させる働きがあります。したがって、酸素や水の存在下でも反応が進むのが大きな特長ですが、反面空気に触れると徐々に分解して活性がなくなってしまう性質がありますので、その取り扱いには注意してください。
象牙質接着に対する「キャタリスト」の役割は?
少量の水分と酸素が助触媒として作用して、「キャタリスト」の TBB は MMA を重合させる硬化触媒として作用します。したがって通常の硬化触媒では硬化阻害因子となる象牙質表面の湿り、象牙細管からの滲出液、象牙質表面に存在する酸素などが有効に作用して、スーパーボンドは象牙質面から硬化が進行するといわれています。Q1で紹介した 4-META の拡散効果により象牙質に拡散・浸透したモノマーを、TBBは確実に重合硬化させるため、スーパーボンドは高度な象牙質接着性を発揮するといわれています。
拡散促進(接着性)モノマー「4-META」とは?
4-META とは、4-Methacryloxy ethyl trimelitate anhydride の略称で、下記の構造を持つ化合物です。MMA の誘導体で、モノマー液の MMA が重合して PMMA になる際に取り込まれて、いわゆる共重合体を作ります。この 4-META が、スーパーボンドの接着性の発現に大きく寄与しています。(Q7参照)
接着性モノマー「4-META」の役割は?
歯質
4-META は、歯質親和性が高く、エナメル質表面の凹凸に対し良好な濡れ性と含浸性を発揮し、それがエナメル質との接着性を向上させるといわれています。一方象牙質では 4-META が MMA の浸透を助けて、象牙質表面組織の内部まで 4-META/MMA が浸透し、重合します。このレジンと象牙質が一体化した層を樹脂含浸層と呼び、この樹脂含浸層の形成がスーパーボンドの象牙質接着性を発現するばかりでなく、二次カリエスを防止し、歯髄を外部刺激から守るのに有効であるといわれています。
金属
4-META は金属表面の酸化被膜と化学結合し酸化物の水酸基と水素結合等を形成し、金属接着性を示すといわれています。したがって、酸化被膜の出来やすい非貴金属合金は、表面をサンドブラスト処理するだけで金属表面に酸化被膜が形成され、スーパーボンドは良好な接着性を示します。一方貴金属合金の場合は、表面に酸化被膜が出来にくいため、V-プライマー処理が必要です。